第3回SICEポストコロナ未来社会ワークショップ
コロナ時代のVR
新型コロナウイルスの蔓延を受け,誰もがスクリーン越しに他者とコミュニケーションをとっていく時代が訪れました. 多くの研究者が思い描いていた技術浸透のフェーズをいくつも通り越し,実践的に運用しながら適宜改善していくという形で,技術が展開しています.このコロナの時代に,VR技術をどう活かせるのか?VR研究者が想定するべき未来像はどんなものか?等,VRの視点でコロナ時代を切り取って議論したいとの思いから,このようなワークショップを開催することとなりました.先端研究の現状とそれによって描かれる未来,コロナ時代にVR研究者がどう貢献できるのか,知識を共有し議論を深めたいと思っています.
開催情報
- 日時: 8月29日(土)15:00〜
- 開催:Zoomによるオンラインワークショップ
- 参加登録:
- こちらよりご登録ください!(7月28日19:00よりご登録可能です)
- 8月28日(金)12:00に登録を締め切ります.お早めにご登録をお願いいたします.
- こちらよりご登録ください!(7月28日19:00よりご登録可能です)
- 主催:計測自動制御学会 (SICE)
- 企画:SICEポストコロナ未来社会WG
- 協賛:
- オーガナイザ
- 牧野 泰才(東京大学)
- 望山 洋(筑波大学)
講演者
- 特別講演
- 舘 暲(東京大学名誉教授)
- 招待講演
- 篠田 裕之(東京大学)
- 稲見 昌彦(東京大学)
- 鳴海 拓志(東京大学)
講演プログラム
- 15:00-15:10 オープニング
- 15:10-15:40 (特別講演)コロナ危機後の社会とテレイグジスタンス
- 講演者:舘 暲(東京大学名誉教授)
- 概要:アルビン・トフラーが、その著書『第三の波』で、情報革命の結果、新しい生活様式が可能になるとし在宅勤務を提唱したのは、1980年のことであった。それから40年が経過した現在、これが現実のものになった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、在宅勤務が広く行われるようになったからである。しかし一方、コンピュータに向かってできる、会議、相談、指示、財務、会計、総務、企画、設計、デザイン、プログラミングなどの、いわゆるホワイトカラーの仕事はテレワーク可能であっても、医療や福祉、水道、電気、コンビニ、スーパーマーケット、建設、土木など、社会を根幹で支える仕事の多くはその場にいる必要があり、遠隔勤務は難しく、テレワークを困難にしている問題が顕在化してきた。
この問題は、身体を持ったロボットを自分の分身として働かせるようにできれば解決できる。それを可能にするのが、テレイグジスタンス(telexistence、遠隔存在)である。テレイグジスタンスとは、人間が物理的に存在する場所とは異なる場所で実質的に存在し、そこで自在に行動するという存在拡張の概念であり、それを可能にする技術体系のことも指す。
テレイグジスタンスの普及で身体的な作業も遠隔でできるようになれば、現在は通勤を余儀なくされている多くの職種で、テレワークが可能になる。そうなれば、都心から離れて家で働くこともでき、子育てや介護に忙しく長時間勤務ができない人でも働きやすくなる。一方、高齢者もロボットを自分の新しい身体として使うことにより、それによって身体の衰えをカバーして働ける。
また、世界中のどこからでも身体を使った労働ができるようになれば、仕事のために家族と離れて外国に移住する必要がなくなる。また、24時間の労働が必要な職場では夜勤をなくし、時差を利用して昼間の国の人たちに働いてもらうことが可能になる。勿論、テレイグジスタンスは、観光や、ショッピング、レジャーなどの業界にも大きな変革をもたらし、「瞬間移動産業」といった新しい産業分野を形成するに至ると考えられている。
本講演では、歴史的な考察に立脚して、現状を概観し、来るべきテレイグジスタンス社会について俯瞰的に展望する。
- 15:40-16:00 触れずに触るインタフェース
- 講演者:篠田 裕之(東京大学)
- 概要:空中超音波を使って触覚を再現する研究の現状を紹介し、コロナ時代の活用方法を考える。非接触の刺激によって触覚を作り出すことができれば、接触感染のリスクがない空中タッチパネルが可能になる。さらに平面タッチパネル以上に便利な操作インタフェースへと進歩し、これまで以上に親密なコミュニケーションや新しい触覚の体験を楽しむことができるようになる。コロナがもたらす新技術へのニーズが未来の生活をどのように変えていくか、触覚の活用という観点から考察する。
- 休憩(10分)
- 16:10-16:30 ポスト身体社会:Physical DistancingとSocial Intimacyの両立に向けて
- 講演者:稲見 昌彦(東京大学)
- 概要:現在我々はSociety4.0とも位置付けられる情報化社会に生きている。そして情報化とは脱物質化・脱身体化とも換言できる。情報化により様々なサービスやビジネスが生まれた。今回のコロナ禍であっても、大学や企業において講義や会議を辛うじて行うことができたのも情報化の貢献といえる。しかしながら、現状の遠隔会議システムをはじめとする情報ツールを介したコミュニケーションにおける身体性の喪失により、諸問題が顕在化しつつある。
テレイグジスタンス技術やアバター技術、触覚技術などは情報化社会に身体性を取り戻す試みともとらえることができ、このことで、Physical Distancing と Social Intimacyとを両立可能となると考えられる。本講演ではポスト身体社会において身体性を扱うための研究事例について紹介するとともに、多様な身体を包摂する社会としてのSociety5.0を展望する。
- 16:30-16:50 バーチャルだからうまくいく アバタ時代のコミュニケーションと人間観の変容
- 講演者:鳴海 拓志(東京大学)
- 概要:ビデオ会議に代表される現状の遠隔コミュニケーションでは,対面と同じ情報量をそのまま正確に送れるわけではなく,ともすればコミュニケーションの質も低くなると考えられがちである.一方で,現実そのままの情報を送るのではなく,送る情報に適切なフィルタをかけて相手に伝えることで,コミュニケーション中の認知負荷を減らしたり良い心理効果を増幅したりという効果を生じさせ,対面以上に効果的なコミュニケーションを誘発することも考えられる.特に昨今では,VRやビデオ会議においてアバタを用いることで,自身の身体の見た目やあり方を変えることが簡単になっている.近年のVR研究では,アバタの利用は単に相手に自分を相手にどう見せるかということを超えて,自己に対する認識をも変容させ,発揮能力や思考,行動までをも変容させることが明らかになってきた.こうしたアバタが生む効果を積極的に活用することで人の能力の拡張やコミュニケーションの活性化・効率化を図る研究について紹介するとともに,アバタ時代の新しい人間観についても議論をしたい.
- 休憩(10分)
- 17:00-17:40 パネルディスカッション
- 17:40-17:50 クロージング