第4回SICEポストコロナ未来社会ワークショップ
人間行動と社会のモデリング
〜経済・AI・制御の接点〜
これまで制御理論は,機械系のように精密なモデリングが可能な物理系を主な対象としてきました. しかし,例えばエネルギーマネジメントシステムにおける省エネやCOVID19の感染拡大抑制をエンジニアリングの観点から 考える場合,人間や社会といった非常に不確かな対象に対して,どのようにアクションを起こし, 行動や意思決定を促せばよいのか,その問に対する答えは現在の制御理論にはありません. 本ワークショップでは,経済学および人工知能,そして制御理論の融合分野で活躍されている先生方を 講師にお呼びして,その最先端の研究を紹介していただきます.現代社会の諸問題を解決するための 新しい研究分野を創出する足がかりになることを期待しています.
開催情報
- 日時: 9月11日(金)13:00-16:00
- 開催:Zoomによるオンラインワークショップ
- 参加費
- 学生:無料
- SICEおよび協賛学会会員:2,000円
- 一般:3,000円
- SICE賛助会員限定の団体券も用意しています
- 横幹連合会員学会の会員の方は会員価格(2,000円)で聴講できます.横幹連合の会員学会は以下のページをご参照ください.
- 参加登録:下記ページよりお申し込みください.
- 主催:計測自動制御学会 (SICE)
- 企画:SICEポストコロナ未来社会WG
- 協賛:
- オーガナイザ
- 永原 正章(北九州市立大学)
- 畑中 健志(東京工業大学)
- 谷口 忠大(立命館大学,パナソニック)
講演者
- 特別講演
- 依田 高典(京都大学):
economics + machine learning
- 依田 高典(京都大学):
- 招待講演
講演プログラム
- 13:00-13:10 オープニング SICE会長 小野晃(産総研)
- 13:10-13:40 (特別講演)人間を動かすのはインセンティブかナッジか:融合する行動経済学・フィールド実験・機械学習
- 講演者:依田 高典(京都大学)
- 概要:講演者の研究歴をたどると、人間の限定合理性に注目し、行動のバイアスを探究する「行動経済学」、日常生活の中で無作為比較対照実験を行い、人間行動の因果的仮説検証を行う「フィールド実験」、そしてIoT等によって自動収集されたビッグデータを用いてノンパラメトリック統計学で分析する「機械学習」へと推移し、それらの融合研究を行ってきた。既に「行動経済学」「フィールド実験」の各分野ではノーベル経済学賞受賞者を輩出し、「機械学習」分野の受賞もさほど遠くないとみられる。そうした中で、近年、スタンフォード大学スーザン・エーシー教授達の貢献である機械学習と計量経済学の発展により、因果性と異質性を同時に識別する「因果的機械学習」が注目されている。深層学習によって始まった第三次人工知能ブームだが、今後は因果的機械学習がブームを二分する潮流となるだろう。この講演では、行動経済学・フィールド実験・機械学習の融合を紹介しつつ、JST CREST事業「分散協調型エネルギー管理システム構築のための理論及び基盤技術の創出と融合展開」(東京大学 藤田政之 研究総括)で手がけた省エネ節電フィールド実験を下敷きに、因果的機械学習の研究事例をかいつまんで報告する。
- 13:40-14:00 小規模分散型エネルギーマネジメントシステムの取り組みについて
- 講演者:牛房 義明(北九州市立大学)
- 概要:2015年のパリ協定の締結、SDGs(持続可能な開発目標)の採択により脱炭素社会の実現に向けて取り組みが盛んになり、再生可能エネルギーのさらなる普及、その有効活用のための研究開発が積極的に行われている。特にFIT切れの小規模分散電源、蓄エネ設備を利用した自立分散型のエネルギーマネジメントの構築が求められる。本講演では、JSTの「SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム」で現在取り組んでいるグリーンプロシューマープロジェクトを紹介する。
- 休憩(10分)
- 14:10-14:30 機械学習と調和する制御理論
- 講演者:加嶋 健司(京都大学)
- 概要:システム制御分野においても,機械学習に対する期待は高まっている.モデルフリー手法に目が行きがちであるが,強化学習に関する研究をみてもモデルの重要性はむしろ増していると言える.DGKF論文から30年が経過し,より柔軟に不確実性に挑戦するための新しい手法と機会を機械学習がもたらすか,L4DC, CDC, IFAC, ICMLなどのサーベイを通して講演者が感じた研究の動向を紹介しつつ議論したい.
- 14:30-14:50 生産消費者を主体とした地域電力網のための線形関数提出型ダブルオークションと分散最適化
- 講演者:谷口 忠大(立命館大学,パナソニック)
- 概要:ポストコロナの時代はポストFITの時代でもある.地域に分散されて導入される再生可能エネルギーに基づく電源からの電力供給をいかにして中心的な制御主体なくして,マルチエージェントとしての生産消費者に分配することができるだろうか.本講演は生産消費者のマルチエージェント系において,大規模な電力会社や価格を制御する主体なしに価格調整を行い電力融通を行うメカニズムとして線形関数提出型ダブルオークションについて紹介し,その最適化問題との関係,双対分解との関係を通した,最適性の証明に関して論じる.
- 参考文献:
- Taniguchi, T.; Kawasaki, K.; Fukui, Y.; Takata, T.; Yano, S., Automated Linear Function Submission-Based Double Auction as Bottom-up Real-Time Pricing in a Regional Prosumers’ Electricity Network. Energies 2015, 8, 7381-7406. https://www.mdpi.com/1996-1073/8/7/7381
- Taniguchi, T.; Takata, T.; Fukui, Y.; Kawasaki, K. Convergent, Double Auction Mechanism for a Prosumers’ Decentralized Smart Grid. Energies 2015, 8, 12342-12361. https://www.mdpi.com/1996-1073/8/11/12315
- 14:50-15:10 クラウドソーシングを用いたインセンティブ設計
- 講演者:松原 繁夫(大阪大学)
- 概要:ポストコロナ社会に向けた行動変容の重要性が語られ,また同時に,人の行動を変えることの難しさも語られている.この課題解決にはインセンティブのより深い理解が役立つと考えられる.一方で,講演者はクラウドソーシングにおけるワーカの動機づけに興味を持っている.強化学習技術を組み入れることで,社会的,金銭的など様々なインセンティブの中から状況に適したものを選択する方法を紹介し,上記課題に関するクラウドソーシング活用の可能性を議論したい.
-
休憩(10分)
- 15:10-15:50 パネルディスカッション
- 15:50-16:00 クロージング